北米の本 梅風呂

2010年04月27日

ロバート・マキャモン『少年時代』


少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)


ロバート・R・マキャモン著、二宮磬訳『少年時代』読了。書店で仕分けをするとしたら、この本はミステリーの棚に置かれることになると思う。けれども、単なる謎解きものの枠には収まらない、笑いあり涙あり感動ありの素晴らしい作品だった。
時は1964年、舞台はアメリカ南部にある人口1,500人あまりの町ゼファー。物語の主人公は、この小さな町に暮らす空想好きの少年、コーリー・マッケンソンである。彼には親友が三人いる。物語の中で、コーリーはこの三人と共に、川に潜む怪獣と遭遇し、ロスト・ワールドから来た恐竜を解き放ち、ギャングに追い回され、火星人の襲来におびえ、不良少年たちと対決する。また、この冒険に満ちた一年をとおして、コーリーは恋を知り、愛するものを失う悲しみを味わい、家族の力を確かめ、書くことの喜びを知る。
こうしたコーリーの青春を物語の縦糸とするならば、横糸は、湖で起きたおぞましい殺人事件である。ある朝、コーリーは殺された男の乗った車が湖に沈むのを父と共に目撃してしまう。果たして男は何者なのか。誰がその男を殺したのか。犯人はゼファーにいるのか。この事件がコーリーたち家族の生活に暗い影を落とすようになる。
少年の成長物語と陰鬱なミステリーが一つになった、極上のエンタテイメント。少年の心を忘れていない人ならきっと楽しめる、素敵な作品です。
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2010年04月24日

ナム・リー『ボート』


ボート (新潮クレスト・ブックス)


あちこちの書評で取り上げられていた、ナム・リー著、小川高義訳『ボート』読了。新刊翻訳本を読むのは本当に久しぶりだ。新刊翻訳本の道標として重宝していたすみ&にえさんのHPが更新されなくなってからこちら、新刊本を追いかけるのがどうも面倒くさくなってしまって、あらかた評価の定まったものばかりを読んでいた。

この書き手は本物だ、というのが最初の数編を読んでの感想。この作品を語るうえで作者の経歴は切っても切り離せないものなので、英語版 Wikipedia から一部抜粋して訳したものをメモ代わりに載せておく。

「ナム・リー (1978 〜) はベトナム生まれのオーストラリア人作家である。生後数ヶ月で両親と共にボート難民としてベトナムからオーストラリアに渡った。企業弁護士として働いていたが、文筆業への転向を決め、2004 年に米国はアイオワ大学の作家養成ワークショップに参加する。処女短編は 2006 年に Zoetrope 誌上で発表された。オーストラリア ABC ラジオのインタビューで、彼は法律から文筆業への鞍替えの理由として、読書への愛を挙げている。
「私は読書を愛していました。だからなぜ作家になる決意をしたのかとおっしゃられるなら、まさにそれが理由です。私は読書家で、読書で出会ったあれこれにすっかり夢中になっていたので、『これより素敵なものなんてあるんだろうか』などと考えていました。この気持ちを他の人たちにも味わってもらえるよう努力すること以上に、有意義な時間の使い方があるでしょうか」
同じインタビューの中で、彼は初めて書いたのは詩だと明かしている。
彼は 2008 年にオーストラリアに戻ったが、イギリスに移ってイーストアングリア大学でライティング・フェローシップ (特別研究員のようなものか) を受けている。
インスピレーションの源は何かと問われた彼は、2008 年にこう答えている。「私の最大のインスピレーションの源は、両親による選択と犠牲です。これには未だに驚かされます」

『停電の夜に』で知られるジュンパ・ラヒリなど、いわゆるエスニック系作家は自らのバックグラウンドを前面に出した作品を書くことが多いが、ナム・リーにとっては、エスニシティはあくまで素材のひとつに過ぎない。最初の短編『愛と名誉と憐れみと誇りと同情と犠牲』に彼のこうした姿勢が如実に表れている。この短編を、作家生活をスタートさせた若き作家ナム・リーの所信表明として読むと面白い。
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2009年07月21日

フランク・マコート死去

『アンジェラの灰』、『アンジェラの祈り』で有名なフランク・マコートが死去。

http://www.asahi.com/international/update/0720/TKY200907200052.html
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2008年06月03日

ケルアック『オン・ザ・ロード』

― ぼくにとってかけがえのない人間とは、なによりも狂ったやつら、狂ったように生き、狂ったようにしゃべり、狂ったように救われたがっている、なんでも欲しがるやつら、あくびはぜったいしない、ありふれたことは言わない、燃えて燃えて燃えて、あざやかな黄色の乱玉の花火のごとく、爆発するとクモのように星々のあいだに広がり、真ん中でポッと青く光って、みんなに「ああ!」と溜め息をつかせる、そんなやつらなのだ。

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2006年11月16日

I just wanted to be somewhere that wasn't here.

'But why on earth would you want to live in France?'
'No particular reason. I just wanted to be somewhere that wasn't here.'

「だけど一体なんでまたフランスに住みたいなんて思ったんだ?」
「特に理由はないさ。ここではないどこかに行きたかっただけだ」


英語の勉強がてら読んでる Paul Auster の "Leviathan" より。高校の時に『ノルウェイの森』を読んだときはぴんとこなかったのに、大学で読み返してみるとぐっと近くに感じた。それと同じように、大学時代には単に面白いだけだった『リヴァイアサン』も、今読むとより「近い」と感じるんだよなあ。不思議。
posted by うめ at 22:30| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月22日

『灰色の輝ける贈り物』アリステア・マクラウド著 読了

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アリステア・マクラウド著 中野恵津子訳『灰色の輝ける贈り物』読了。

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2006年01月09日

『なつかしく謎めいて』

なつかしく謎めいて』 アーシュラ・K・ル=グウィン著、谷垣暁美訳 読了。


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2005年12月15日

スタジオジブリ、『ゲド戦記』を映画化

アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズをご存知だろうか。1968年に『影との戦い』が出版されて以降、2001年までに『こわれた腕環』、『さいはての島へ』、『帰還』、『アースシーの風』、『ゲド戦記外伝』の全6冊が出版されている。ルイスの『ナルニア国物語』やトールキンの『指輪物語』と並ぶ、3大ハイファンタジーの一つだ。
その『ゲド戦記が』今回、宮崎駿氏の息子である吾朗氏の手によってアニメ映画化されるという。

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2005年09月28日

L.M.モンゴメリー著 掛川恭子訳『赤毛のアン 完訳クラシック赤毛のアン 1』読了

L.M.モンゴメリー著 掛川恭子訳『赤毛のアン 完訳クラシック赤毛のアン 1』読了。




「クイーン(短大)を卒業したときは、未来がまっすぐな一本道のように、目の前にどこまでものびているようだったわ。どんなことがおこるか、先のほうまで見とおせると思ったくらいだった。
 でも、今その道には、曲がり角があるの。曲がり角のむこうに何があるか、今はわからないけど、きっとすばらしいものが待っていると信じることにしたわ」




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posted by うめ at 03:30| バンコク ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月03日

『愛はさだめ、さだめは死』

ジェイムス・ティプトリー・ジュニア『愛はさだめ、さだめは死』読了。


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2004年11月30日

アニー・トレメル・ウィルコックス『古書修復の愉しみ』読了

アニー・トレメル・ウィルコックス『古書修復の愉しみ』読了。
原題は"A Degree of Mastery:A Journey through Book Arts Apprenticeship" by Annie Tremmel Wilcox 。原題をそのまま訳すと、『習熟の課程−書物工芸修行の旅』。



以下はアマゾンより抜粋。

本書はアメリカの一流製本工芸・書籍修復家ウィリアム・アンソニーに女性としてはじめて弟子入りした著者が、書籍修復家として成長する過程を自伝的につづった回想録である。  その魅力は、書籍修復、それも西洋の古い稀覯本という一般の人がほとんど知らない特殊な世界を具体的な技術を含め、実に詳しく面白く、いきいきと描き出している点にある。  いきなり修復作業の現場から始まる書き出しも巧みで、読者は目をみはる思いで作業工程のひとつひとつをたどってゆくことになる。といっても技術的な手引き書ではない。壊れた本の直し方について、職人の命の道具について、情熱をこめて語る著者の筆致は、無味乾燥な技法の記述とはほど遠い。書物の美に魅入られた人間が、自らの体験に基づき、製本工芸という~~手仕事の技を学ぶ愉しみ、実践する喜びをつづったところに面白さがある。  本書はまた師との出会いから、弟子としての修業時代、そして師匠の死を乗り越えて一人前の職人になるという一種の成長物語となっており、失敗や苦労も含めて徒弟時代の興味深いエピソードの数々がユーモアを交えて語られる。  本が機械で大量生産されては捨てられてゆく時代の中~~で、貴重な古書を手で丹念に修復するという営みは、決して単なる時代錯誤やノスタルジアではない。 書物という知的財産を、数十年、数百年にわたって保存し、次代に伝えることの意味ははかりしれないほど大きい。~



実はこの本を読み始めたのは10月である。読み終えるのに1ヶ月以上かかってしまった。僕の読書には2パターンあって、ほんの2,3日で読みきってしまう場合と、それこそ1ヶ月程度かかってしまう場合がある。
専門的な言葉多く出てきて難しいというのも時間がかかる理由の一つだが、「数年にわたる出来事」を日を追って描いている本の場合、一気に読み進めてしまうことができないのである。本の時間に「あてられてしまう」というのか・・・。


さて内容だが、本書はアメリカでの貴重書の修復作業を扱ったもの。そこに日本の和紙、砥石、刷毛などもでてきて面白い。著者は日本で紙漉きを学んだアメリカ人から紙漉きを習ったり、アメリカに渡った日本人建具師トシオ・オーダテが英語で記した著書を読んだりして、日本的な職人気質に大いに関心があるようである。


翻訳に関してだが、訳者はこの本を訳すために「書籍の修理と保存」という講座に1年半通ったそうである。天晴れ訳者魂。しかし、もう少し日本語に気を遣って欲しいなと思う部分もあった。
posted by うめ at 12:25| バンコク ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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