じごくのぼっとんべんじょ 梅風呂

2005年11月01日

じごくのぼっとんべんじょ

それは小松町1丁目にあると噂されていた。


小松町1丁目の、ヤギ楽器や児童センターのすぐ近くにあると噂されていた。



「じごくのぼっとんべんじょ」


僕らの間で、まだそれを見たことのある者はいなかった。「じごくのぼっとんべんじょ」はそんじょそこらのぼっとんべんじょじゃあない。何せその暗い穴は地獄の底まで続いているのだ。ぽっかり開いた穴にふと足を滑らせてしまったらどうのなるのか・・・・。どこまでもどこまでも落ちてゆき、うんこにまみれるどころではすまない。「じごくのぼっとんべんじょ」の噂は、僕ら小松町1丁目(と早瀬町1丁目)の勇敢な子供たちを震撼せしめた。


だれがどうやって突き止めたのか。ある日この有名なぼっとんべんじょは、ちかちゃん家の裏手に住む、「あのお婆さん」家の庭にあると判明したのである。
「あのお婆さん」は入り組んだ迷路のような路地にぼろぼろの家を構えていた。お婆さんは耳が聞こえなかった。彼女の声を耳にしたものもいなかった。いつも家の前に座って、道行く子供たちを笑顔で眺めていた。しかし「あのお婆さん」はまた別の話だから、いつかまた別の時に話すことにしよう。
とにかく、あの只でさえ薄気味わるい路地の奥に「じごくのぼっとんべんじょ」があることが判明したのである(人の口に戸はたてられないものだ)。


場所が分かった以上、勇敢な小松町1丁目(と早瀬町1丁目)の僕らが黙っているわけにはいかない。勇敢な探索隊を組織し、内心びくびくしながらも「じごくのぼっとんべんじょ」を見届けることを決意したのである。5、6人は集まっただろうか。


「さあ行くか」
みたいな顔でみんなを見渡し、勇敢な子供達の中でもとりわけ勇敢だった僕は、「あのお婆さん」家のある路地へ踏み込んだ。
路地は狭くて、昼間でも薄暗い。何年前に建てられたのかもわからない、年経た妖怪みたいな家が並んでいる。僕らは家々の脇をすり抜け、誰もいないことを用心深く確認してから、「あのお婆さん」の家の庭に踏み込んだ。



あった!



それは胸まである草が生い茂った庭の片隅にぽつんと立っていた。これまた薄汚れた、屋根に煙突のある小さな小屋である。サイズから言って、この中に便所があるのは間違いない。僕らはジャングルの探検隊のような決意で草を押し分け、小屋に近づいていった。日が翳り、空気には生臭い臭いが混じり始め、カラスが不気味な声で鳴いた・・・のは気のせいかもしれないが、その時の僕がしょんべんをちびりそうになっていたのは間違いない。


「誰が開けるんや」
「お前があけーや」
「いやや」
「どうしよ誰か来たら」
「怖い」
「はよあけろや」
「うるさいな、わかったあけるわいや」


僕は小屋の取っ手に手をかけた。そして開けようとした瞬間。

「きゃああああああ!!」

探検隊の唯一の女隊員、ちかちゃんが恐れのあまり叫び声をあげた。それを聞いた僕らは叫びながら、一目散に逃げ出したのである。お婆さん家の庭を飛び出し、路地を走り抜け、日の当たる娑婆へと、逃げる猫みたいなスピードで。


後から聞いてみたところ、探検隊の誰もあの小屋のなかは見えなかったということである。勇敢な探検隊の崇高な目的は、ちかちゃんの叫び声のおかげで絶たれてしまったのだ。その後、もう誰もあの「じごくのぼっとんべんじょ」を覗こうと言い出すものはいなかった。そして月日は流れ、僕らのうちの誰もがあのべんじょのことも忘れてしまった。そしていつしかおばあさんの家は取り壊され、あの鬱蒼とした庭もなくなってしまった。便所がどうなったのか、誰もしらない。



・・・だが僕だけは、あの日しっかり小屋の中を覗いたのである。それは確かにあった。「じごくのぼっとんべんじょ」の真っ暗な深い穴が、僕を覗いていた。だけど僕は恐れをなして半分おしっこを漏らしそうになっていたから、誰にもそのことを言えなかったのである。
posted by うめ at 01:11| バンコク ☁| Comment(11) | TrackBack(0) | 物語る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へええええ。
その頃、私はおそらく北野町2丁目、
正門通りをはさんでヤギ楽器や児童センターの向かい側に
住んでいたのだけれど、
”じごくのぼっとんべんじょ”の話は一度も聴いた事なかった。
しっとったら絶対行ったのに!

英賀保駅のちかくの”幽霊屋敷”はどうなったかしってる?

Posted by きょうこ at 2005年11月01日 14:31
こんちわ
初めてカキコまさせてもらいますわ。
そっかー。あのお婆さんの家にそんな秘密が・・
んで、あのお婆さん耳聞こえへんかったんか。
でも、通るとき挨拶してたら、いつも「こんにちわ」って返してくれてたよー

>きょうこさん
英賀保駅の幽霊屋敷って、三叉路角に建ってた「はてな商会」の事ですか?
それとも、ラーメン屋の向かいにあった「薄汚れた大きな白雪姫」??
Posted by iso at 2005年11月01日 19:04
何のこと?どこのこと?こわいやん。




Posted by あゆみ(英賀保の住人) at 2005年11月01日 21:04
おお、見事に広中出身者が4名集まりましたな!3人は面識あるだろうか?? 気になる人は3人ともミクシーの住人なので、チェックだ!


>きょうこ先輩

アメリカからコメントが! きょうこ先輩、早瀬町じゃなかったでしたっけ。「じごくのぼっとんべんじょ」は小松町1丁目と早瀬町1丁目の子供限定なのかな。
英賀保駅近くの「幽霊屋敷」とはどこらへんでしょう?? ヤフーの地図で教えて下さい!


>いそっち
「はてな紹介」は幽霊屋敷じゃないんじゃない? 流石に入ったことはないけれど。
「薄汚れた大きな白雪姫」はもういないのかなあ。ついでに、「大きな小人たち」もいなかったっけ?? 


>あゆみ

はてな商会は、この角にあったリサイクルショップだよ。奇妙奇天烈な看板がかかっていたような。僕らが高校のころはあったはず。

http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=34.48.33.832&el=134.38.50.190&la=1&sc=3&skey=%B1%D1%B2%EC%CA%DD&prem=0&CE.x=251&CE.y=247

そしてここらへんに「大きな白雪姫」が居た。昼も夜も、じっと通りの方を向いて立っていた。どっちも家からめっちゃ近くやん! きっと化けてでるね。きひひ。

http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=34.48.34.079&el=134.38.50.290&la=1&sc=3&skey=%B1%D1%B2%EC%CA%DD&prem=0&CE.x=213&CE.y=278


そして、地獄のぼっとんべんじょの場所は今となっては誰にも分からないのであった・・・・。
Posted by うめ at 2005年11月03日 01:00
私は元北野アパートの住人なので、早瀬町じゃないでー:)

私のいってる”幽霊屋敷”は、”はてな商会”とも”白雪姫”ともちょっとちがうような?っていうか、はてな商会はわかるけど、白雪姫の話、しらないねんけど!!!

幽霊屋敷は、広畑から英賀保駅に向かう道沿い右手にあって、青い屋根の一軒家で、あああ記憶が今となっては定かじゃないけど、ちょうど交差点の近くで、周りには喫茶店とか、あと駐車場とかあったような…。うめちゃんの地図だと、春日町を抜けてガススタ”ゼネラル”がある向かいくらいじゃなかったかなー。

子供の頃に、あまりにこわいので住人がすぐに出て行き空きや状態が続いて話題になり、テレビかラジオの取材が来たという噂があったけど。


Posted by きょうこ at 2005年11月03日 04:35
そんな幽霊屋敷ありましたっけ?
広畑や飾磨にも不思議スポットはたくさんあったんですねぇ。

それはそうと、家でしながらキョウコ先輩の演奏するジャズ聴いてますよ! ダウンロードさせて頂きました。
Posted by うめ at 2005年11月04日 03:39
>うめちん
小人もいたん?わからんかった。
セルロイドの白雪姫、ほっぺたが汚れてて、道路の方向に顔向いてるねんな。
夜、歩道歩いてるときにふと見ると、街頭のライトで目が光ってて、でもほっぺたは汚れてて、それはそれは恐ろしいことでした。。チャイルドプレイのチャッキーみたいやわ。
まだ居たら、今度帰省したときに見に行こう。

ハテナ商会。その昔弟がゲームボーイのソフトを100円で買って、3日しない内にぶっ壊れました。あの店入るのは、宝探しみたいでワクワクしたな。

青い屋根の幽霊屋敷の話。今度英賀保の従兄弟に聞ういとこっと〜♪
Posted by iso at 2005年11月07日 00:48
>いそ

白雪姫と幽霊屋敷、確認したら教えてね〜。
気になるぞえ。
Posted by うめ at 2005年11月07日 22:31
>うめ
らじゃ〜!
Posted by iso at 2005年11月13日 21:03
恐縮ながら、
続けて、コメントさせて頂きます。

これが、噂の、
「じごくのぼっとんべんじょ」
訳して
「The Botton-toilet of the Hell」
ですね。。


・・凄い。読み込んじゃいましたよ。。
これ、実話、なんですか?
少年時代の、大冒険。
噂の「いわくつきの」場所に、
みんなで行ってみるという、経験。
懐かしくも、なっちゃいました。

私も小学生時代、ボロ体育館の、3番目のぼっとん便所に、
「トイレの花子さん」に会いに、何度も行ってたものです。
―1人で(悲)。
Posted by R at 2005年11月27日 13:05
>Rインコ

9割の事実に、1割の想像力を。

僕も友達と、トイレの花子さんを呼び出すまじないを懸命に唱えていた。でもあれって女子トイレにしか出ないんだっけ。てゆかそもそも、男子と女子ってトイレは別れていたっけ? ううむ。
Posted by うめ at 2005年11月27日 22:09
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