あの日壊れたシャーペン 梅風呂

2005年10月01日

あの日壊れたシャーペン

昔から使っているシャーペンがある。買ったのは中学生の頃か、高校生の頃か、定かではない。



軸は細身で、指の触れる部分には鈍色の滑り止めがついている。その滑り止めには丸い窓のような穴が開いていて、そこから軸に彫られた「H」「HB」などの文字が見えるようになっている。あちらこちら色がはげ、消しゴムもちびてしまっている。かれこれ10年は使っている計算だ。このペンが行方不明になってしまったときは、慌てた。何しろ、思い出深い出来事のあったシャーペンなのだから。



僕は高校の頃、受験勉強の際もずっとこのシャーペンを使っていた。英単語を暗記するために、裏が白い広告を取っておいて、このペンで繰り返し繰り返し呪文のように書き付けたことを覚えている。
当然、受験当日もこのペンを使うつもりだった。あの朝、狭いホテルの中で戦いに赴くインディオのような気持ちで準備をしていたときのこと。何気なしに筆箱の中のシャーペンの頭をノックしてみた。ところが、手ごたえがない。カチカチではなく、スカスカ、だ。ばねが壊れたのだろうか? 芯が詰まったのだろうか? 仏滅と黒猫つきの13日の金曜が一気に訪れたみたいに、不吉な気分になった。僕はあせって分解してみたのだけれど、理由はわからなかった。
仕方なく産業革命時代の製鉄工場みたいな西武新宿駅の近くにあるコンビニで安いシャーペンを買い、試験に臨んだのだった。





姫路に帰ってきてから、あのシャーペンを取り出してみた。カチカチ・・・・。何の問題もなく使えるではないか! その直後に合格通知を受け取った僕は、あの日使えなくなったシャーペンが、悪い気を吸い取ってくれていたのだと思うことにしたのだった。



これが僕とあの古いシャーペンとの少し不思議なお話。


posted by うめ at 00:25| バンコク ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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