劇団PEOPLE PURPLE『ORANGE』 梅風呂

2007年03月16日

劇団PEOPLE PURPLE『ORANGE』

1月14日(日)
劇団PEOPLE PURPLE『ORANGE

舞台は、神戸の「湊山消防署」。ここには日々命の最前線で闘う者たちが居た。
湊山消防署の小日向や石丸は普段はふざけあったり、鍛錬しあったり、談笑しあったり、何気ない時間を過ごしていてもいざ指令が入れば自分の命をかけてでも要救助者のために災害現場に突入する。消防士なら誰もが憧れる特別救助隊員、通称「オレンジ」である彼らだが、10年前、大きな敗北感を味わっていた。阪神・淡路大震災。その時に起こった真実の物語が、そして今、災害と闘い続けている消防士達の真実の姿が、明らかになる。



今回上演されたのはLongバージョンだった。2部構成になっていて、休憩を挟んで3時間半あまり。前半は、消防隊員たちの穏やかな日常の場面から始まる。ギャグがたくさん織り込まれていて、客席の笑いが絶えない。「欧米か」に爆笑。芸人本人のネタより断然面白い。
客席に一体感が生まれたところで、ベテラン隊員が新米隊員たちを集めて、震災のときの話を始める。あのとき何があったのか、消防隊員はどんな働きをしたのか。舞台上で1995年1月の神戸の様子が再現される。
潰れた家々を回り、呼びかけに答えた人のいる家から救助活動を始めたこと。応答のない家を後回しにしようとして、家族に罵倒されたこと。崩れた家から何とか助け出したけれども、死んでいた子供のこと。その親から、泣きながら感謝されたこと。崩れた柱と家具に囲まれて脱出できなくなった女性が、火が迫っているにもかかわらず、「私はいいから他の家に助けにいってあげて」と言ったこと。そしてその家が火にのまれてしまったこと。消防隊員自身の家族が犠牲になったこと。それにもかかわらず彼は救出活動を続けたこと。地震が発生してからの数日間の様子が演じられる。いずれのエピソードも、実際の出来事を元にしているらしい。
そして後半は、1人の若い消防士にスポットが当たる。彼は消防士の中でも一握りの者しかなれない特別救助隊員を目指していた。特別救助隊員はオレンジ色の制服にちなんで、通称「オレンジ」と呼ばれている。後半についてはネタバレになるので詳述しないが、「なぜ自分の身を危険にさらしてまで人の命を助ける仕事についているのか」、悩む消防士の姿が描かれる。

実は、この公演を知ったとき、見に行くかどうか非常に迷った。「未曾有の災害に立ち向かう消防士たちの姿」というテーマはいかにもキャッチーだ。お涙頂戴が目的の作品なんじゃないかという不安があった。僕は軽薄なセンチメンタリズムが嫌いだ。
けれどもね、この作品はよかった。観客を泣かせるためだけに作られた芝居じゃなかった。一方的なヒロイズムだけが描かれてるのではなかった。また、震災という圧倒的な暴力に屈服する人間の無力さを描きながら、そこで虚無主義に陥るのでもなかった。無力であるということを自覚しつつも、次のステージへ進むためにもがき苦しむ姿がきちんと丁寧に描かれていた。また、観客に震災や人命救助について考える余地も残してくれた。

そういえば、クロード・ランズマン監督の『SHOAH(ショアー)』という映画について語ったことはあっただろうか。ナチスによるホロコーストについての証言を集めたドキュメンタリー映画だ。脚本もなく、役者もおらず、記録映像やナレーションもない。全編9時間30分を通して、ホロコーストの生き残りたち(被害者側のユダヤ人もいれば、加害者側のゲシュタポ、SS0もいる)へのインタビューで構成されている。この作品をスピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』と対比してみることで、見えてくるものがあるのだが、長くなるのでいつかまた別のときに話すことにしよう。また、ショアーを語る上で避けて通れないのが、アドルノの「アウシュビッツ以降、詩を書くことは野蛮である」という言葉だけれども、
posted by うめ at 21:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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