翻訳不可能性をめぐる3つのメモ 梅風呂

2011年11月17日

翻訳不可能性をめぐる3つのメモ

まだこのブログを覗いてくれてる人なんているのかな? 酸いも甘いも噛みしめて何とかやっています、というご報告を兼ねて、翻訳不可能性をめぐる3つのメモ。


1. 映画にもなった「ナルニア国物語」の第2巻『ライオンと魔女』で、魔女に唆されたエドマンドが虜になるお菓子と言えばプリンだけど、原文ではTurkish Delight(ターキッシュ・デライト)というトルコの砂糖菓子。日本の子供たちに馴染みのないお菓子だから、訳者が仕方なくプディングと訳した。雪と氷に閉ざされた寒い魔女の城で、冷たいプリンをむさぼり食ったりせんよね。子供心に「寒そう」と思ったものだよ。


2. 明治期に訳された「灰かぶり」(シンデレラ)を読むとね、シンデレラが「おしん」と訳されていたりする (別に、奉公に行ったり50%を超える視聴率をとったりするわけではないよ)。シンデレラを探しに来る挿絵の王子様は、サーベルを下げた軍服姿のおじさん。当時の翻訳者たちは、日本人に馴染みのないものを日本にあるものに積極的に置き換えていた。翻訳というよりも翻案と言った方がいいかもしれない。ちなみに、最初に「シンデレラ」を「おしん」と訳したのは坪内逍遙。シェイクスピア翻訳の先駆けとして有名な文学者だね。
グリム童話の翻訳の歴史については、ナダ出版センターの『日本におけるグリム童話翻訳書誌』に詳しい。ナダ出版センターからは、その他、シャーロックホームズやシェークスピア、児童文学などの翻訳に関する素晴らしい書誌が出ているよ。
http://homepage3.nifty.com/nada/index.html


3. エンデの『はてしない物語』はとてもよくできた作品で、至るところに面白いしかけがある。たとえば、『はてしない物語』の中で語られる『はてしない物語』は全部で26章あるけれど、これはアルファベット26文字と対応しており、第1章の書き出しは「A」から始まる単語 (具体的にいうと、Alles = 英語の All) に、第2章の書き出しは「B」から始まる単語 (Bertungen) になっている。第26章の書き出しはもちろん「Z」。これは、「すべての物語はアルファベット26文字で語られる」ということを暗示しているんだね。挿絵にも綺麗な飾り文字が描かれているよ。で、日本語版ではこのしかけがどうなっているかというと、残念ながら反映されていない。ぼくらの言葉は「いろは47文字」だからね。訳者さんも泣く泣くあきらめたのだろう。
これ以外にもいろいろと面白いしかけがあるんだけど、それは別のお話、いつかまた、別のときにはなすことにしよう。
posted by うめ at 01:06| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 翻訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はてしない物語、現実は黒、空想は緑、(逆かな??)で印刷されてるのも印象的でした!!
いつか、子供にかってあげたいです。
Posted by Rika at 2011年11月18日 00:25
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/235569496

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。