ギュンター・グラスのこと 梅風呂

2006年08月15日

ギュンター・グラスのこと

ブリキの太鼓』の作者で、1999年にノーベル文学賞を受賞したギュンター・グラスが、16歳のころにナチス親衛隊に入隊したことをフランフルター・アルゲマイネ紙で語ったという。
それを受けて、各方面からノーベル賞の返還や名誉市民の称号の返上を求める声があがっているとのことだ。

この記事を読んで、ばか言ってんじゃねぇよ、作品の価値に作者の経歴とか人柄とか関係ないよと単純に思ったんだが、ノーベル文学賞の受賞対象者を巡っては過去にも議論があるようだ。受賞対象者の定義は本来「文学の分野においても1つの理念をもって創作してきたものの中で、最も傑出した作品を創作した人」というものだが、伝統的に「(1)人道主義・進歩主義的な作家、と(2)純粋に文学的にすぐれた成果を収めた作家、という二つの基準が混在して」いるらしい(*Wikipedia参照)。政治的な問題もあるようだ。

たとえ人殺しであろうと何であろうと、生み出した作品が素晴らしければ、それはそれで評価されるべきだと思うけれど、賞の影響力が大きいだけに、簡単にはいかないようだ。


うーむ、それにしたって16歳のときに犯した過ちをあげつらうとは。失敗してもやり直してよいというのが現代社会にあるべき寛容性だと思うのだけれど。ただ、ユダヤ人迫害に限らず民族を巡る問題ってのは根が深く、当事者ではない僕には分からないのかもしれないな。見る人によっては、どんなに素晴らしい作品も曇って見えてしまうってこともあるということか。


ところで『ブリキの太鼓』は翻訳が古い上によくなくて、1巻の途中で挫折した。翻訳が出版されてから30年近くたっているのだから、誰か活きのいい新訳を出してはくれないだろうか。それにつけても思うのが、『エデンの東』の新訳の素晴らしさ!

最近読んだW.G.ゼーバルトの『移民たち』水晶の夜のことが出てきたりして、何だか20世紀前半のドイツに引きつけられている梅風呂です。
posted by うめ at 21:19| 東京 ☔| Comment(2) | TrackBack(3) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」
 
この場合は、著者がいったん受賞したものの、結局辞退したレアなケースですよね。 
 
そう、政治的背景やら思想・主義の理由から、ロシアの作家は殆ど受賞対象外になっているのが事実らしいです。
(代表例:トルストイ)
 
ただ純粋に、「読んで世界の人々に感動を与える作品を生み出した著者」に与えればよいと思うのですが・・。

Posted by なおこ at 2006年08月15日 23:41
詳しいね。『ドクトル・ジバゴ』は聞いたことがあったけど、パステルナークという作家は知らなかった。
社会的な理由からではないけど、サルトルもノーベル文学賞を辞退してるのかー。

今回の事件に関する世論調査によると、ドイツ国民の3割がノーベル賞を返還すべきと考えているらしいよ。その3割の人たちの年齢別内訳はどうなっているんだろうか・・・。

Posted by うめ at 2006年08月19日 00:16
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