ナム・リー『ボート』 梅風呂

2010年04月24日

ナム・リー『ボート』


ボート (新潮クレスト・ブックス)


あちこちの書評で取り上げられていた、ナム・リー著、小川高義訳『ボート』読了。新刊翻訳本を読むのは本当に久しぶりだ。新刊翻訳本の道標として重宝していたすみ&にえさんのHPが更新されなくなってからこちら、新刊本を追いかけるのがどうも面倒くさくなってしまって、あらかた評価の定まったものばかりを読んでいた。

この書き手は本物だ、というのが最初の数編を読んでの感想。この作品を語るうえで作者の経歴は切っても切り離せないものなので、英語版 Wikipedia から一部抜粋して訳したものをメモ代わりに載せておく。

「ナム・リー (1978 〜) はベトナム生まれのオーストラリア人作家である。生後数ヶ月で両親と共にボート難民としてベトナムからオーストラリアに渡った。企業弁護士として働いていたが、文筆業への転向を決め、2004 年に米国はアイオワ大学の作家養成ワークショップに参加する。処女短編は 2006 年に Zoetrope 誌上で発表された。オーストラリア ABC ラジオのインタビューで、彼は法律から文筆業への鞍替えの理由として、読書への愛を挙げている。
「私は読書を愛していました。だからなぜ作家になる決意をしたのかとおっしゃられるなら、まさにそれが理由です。私は読書家で、読書で出会ったあれこれにすっかり夢中になっていたので、『これより素敵なものなんてあるんだろうか』などと考えていました。この気持ちを他の人たちにも味わってもらえるよう努力すること以上に、有意義な時間の使い方があるでしょうか」
同じインタビューの中で、彼は初めて書いたのは詩だと明かしている。
彼は 2008 年にオーストラリアに戻ったが、イギリスに移ってイーストアングリア大学でライティング・フェローシップ (特別研究員のようなものか) を受けている。
インスピレーションの源は何かと問われた彼は、2008 年にこう答えている。「私の最大のインスピレーションの源は、両親による選択と犠牲です。これには未だに驚かされます」

『停電の夜に』で知られるジュンパ・ラヒリなど、いわゆるエスニック系作家は自らのバックグラウンドを前面に出した作品を書くことが多いが、ナム・リーにとっては、エスニシティはあくまで素材のひとつに過ぎない。最初の短編『愛と名誉と憐れみと誇りと同情と犠牲』に彼のこうした姿勢が如実に表れている。この短編を、作家生活をスタートさせた若き作家ナム・リーの所信表明として読むと面白い。
posted by うめ at 00:15| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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