『彼方なる歌に耳を澄ませよ』 梅風呂

2006年01月15日

『彼方なる歌に耳を澄ませよ』

『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド著 中野恵津子訳 (新潮クレスト・ブックス) 読了。

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18世紀末、スコットランドからカナダ東端の島に、家族と共に渡った赤毛の男がいた。勇猛果敢で誇り高いハイランダー(スコットランド高地人)の一族の男である。「赤毛のキャラムの子供たち」と呼ばれる彼の子孫は、幾世代を経ようと、流れるその血を忘れない―人が根をもって生きてゆくことの強さ、またそれゆえの哀しみを、大きな時の流れといとしい記憶を交錯させ描いた、感動のサーガ。名人だが寡作な短編作家が、13年をかけ書きあげた唯一の長編、絶賛を浴びたベストセラー。

この小説には愛する主人たちを乗せた小舟のあとを追って、どこまでもどこまでも泳ぎつづける犬がいる。情が深すぎて、がんばりすぎる茶色い犬たちがいる。そして、そんな犬とそっくりな人々がいる。彼らはうたう、ケルトの昔から伝わる自分たちの歌を。その歌声は、父祖の時間や土地から遠く離れ、新しい生活を選ぶ途上にあって、いつかどこかで歌を見失ってしまったわたしたちにも、不思議に優しく懐かしい。



本書はあちらこちらのサイトで絶賛されていた。僕にとっては初マクラウドだ。

18世紀末にスコットランドからカナダに渡ってきたキャラム・ルーアという男の子孫であるアレグザンダー・マクドナルドが、家族や一族の歴史を語る。キャラム・ルーアは赤毛の男で、その子孫たちは「クロウン・キャラム・ルーア」と呼ばれている。クロウン・キャラム・ルーアはみな赤毛か黒毛で、黒い瞳を持つ。家系には双子が生まれやすい。


この小説では、スコットランドの歴史、カナダを巡って争ったイギリスとフランスの歴史、クロウン・キャラム・ルーアの歴史、アレグザンダーの家族の歴史、頑張りすぎる犬たちという大小さまざまな歴史が重なりあい、多重構造になっている。それがわざとらしくは描かれていないから、ちょっと分かりにくいところもあるのだが、読み終わってから、あの部分もスコットランドの歴史と重ねあわされてたのか!と気付いて感慨がいや増す、なんてこともあった。
主人公やその妹、キャラム(主人公の兄の方。一族の祖であるキャラムと、兄弟の中心にいる兄キャラムが重ねあわされている)の語りによって時間軸が過去や現代に飛ぶが、通奏低音として血の繋がりとか一族の絆が鳴り響いている。僕も最近血の繋がりについて考えていたところだから、余計身に迫るものがあったなあ。
情が深すぎて、頑張りすぎる犬たちのエピソードが感動的。

それにしても、スコットランドやアイルランドを描いた小説には、共通するキーワードがある。海と、歌と、貧しさと、血と。それが彼らの歴史の中核にあるものなのかな。歴史に弱いので分からないけれど。そうそう、この本を読む人は、まずあとがきで纏められているスコットランドとカナダの歴史を読んでからの方がいいですよ。
posted by うめ at 12:54| バンコク 🌁| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うめさんの過去日記を漁っていたら、マクラウドの記事が…。これ、僕も読みましたよ。本当に血のつながり、歴史、厳しい自然の描写といったものが幾層にも重なりあっていて、素晴らしい作品だと思いました。犬などの細部の描写って、実体験やご先祖の実話にもとづくものがあるのかなーと思ったり。
Posted by ザンボニ at 2013年02月20日 12:47
おお、ザンボーニさんも読まれてたんですね。マクラウドの小説はどれも大好きです。細部を忘れてしまったので再読しようかな。
Posted by うめ at 2013年04月09日 22:53
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