『なつかしく謎めいて』 梅風呂

2006年01月09日

『なつかしく謎めいて』

なつかしく謎めいて』 アーシュラ・K・ル=グウィン著、谷垣暁美訳 読了。


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先ごろの記事で取り上げた『ゲド戦記』の作者、アーシュラ・K・ル=グィンの最新作だ。

次元を超える方法をとある女性が発見し、多くの人々が別の次元へと旅立つようになった。訪れた先の世界や人について、作者が見聞きしたこと、体験したことをを語るという設定。全15個の世界が描かれている。


<玉蜀黍の髪の女>
イズラックには、本をかじる変な熊たちがいる。もとは応用遺伝学によって作られたペットだったらしい。イズラックでは熊だけでなく・・・。

<アソヌの沈黙>
アソヌたちは、ほとんどまったくといっていいほどしゃべらない。子供の頃には私たちと同じようによくしゃべるのだが、成長するにしたがって、しだいに沈黙を守るようになる。

<その人たちもここにいる>
ヘネベット人の容姿は、驚くほど私に似ている。どこからどこまで、すべて同じと言ってもいいほどだ。しかし、ヘネベット語は理解しがたく、考え方もまるで違った。

<ヴェクシの怒り>
ヴェクシは怒りっぽく、口論、非難、罵り合い、つかみあい、怒りの爆発、不機嫌の発作、大立ち回り、確執、衝動的な復讐によって社会生活が構成されている。

<渡りをする人々>
アンサラックでは、次元からの旅行者は西の大洋に浮ぶ大きな島から出ることはできない。アンサラックの1年は地球の24年に相当し、アンサラックの人々は嘴があり、1年に1度、北への渡りに出る。

<夜を通る道>
フリンシア人たちは、村や町単位の人たち、それに家畜やネズミなどと一緒に、同一の夢を見る。

<ヘーニャの王族たち>
ヘーニャは小さな次元で、ほとんどの人が王室のメンバーだ。たくさんの王や王妃、公爵などであるなか、わずかながらの平民が、王族に注目されながら平民らしい暮らしを守っている。

<四つの悲惨な物語>
マハグルは今では平和なところだが、血なまぐさい歴史を持っている。それだけに、帝国図書館におさめられた歴史書は読み飽きることがない。その物語を4つほど紹介しよう・・・。

<グレート・ジョイ>
「ホリデー次元TM」とは、グレート・ジョイ社が運営する観光の島々のことである。たとえば、クリスマス島では、いつ行ってもクリスマスを存分に楽しむことができる。

<眠らない島>
眠らなければ、人間は天才になれるはずだ。この仮説に基づき、オーリチ人は実験対象となる赤ん坊たちを眠らない子供たちに育て上げた。この研究事業を「天才ベビープログラム」という。

<海星のような言語>
私たちの言語は線状に連なっていくものだが、ンナモイの言語は、海星(ひとで)のように放射線状に広がっていく。

<謎の建築物>
コク次元では、ダコとアクの2種の知的生命体がいる。アクは南にある大陸に、ダコは北半球の三つの大陸に住んでいたが、4千年以上前、人口が急増したダコはアクを征服した。

<翼人間の選択>
ガイの人たちは私たちに似ているが、羽が生えている。彼らは科学技術に抵抗を示し、礼儀正しいがよそよそしい。

<不死の人の島>
イェンディ次元には、不死の人たちが住む島がある。危険だと注意されながらも、私は船に乗り、その島へ行ってみることにした。

<しっちゃかめっちゃか>
ズエヒ次元では、美しく幻想的な世界が広がり、美しいズエヒ人の男女がいるそうだ。だが、ズエヒ人はとても繊細でもろく、旅行客が住民の幸せをめちゃくちゃにしかねない。それでも、旅行客はあとを絶たなかった。




想像を膨らませて、思う存分空想の世界を楽しむことが出来た。だがそれだけではなく、グウィンの文化人類学的な素養に基づくと思われる言語や文化についての記述も奥深い。また、異なる人種の差別や、宗教戦争など、我々が辿ってきた過ちの歴史を皮肉ったような話も出てくる。
でもまあ、肩肘張らずに異世界を楽しむのも良し!
posted by うめ at 02:31| バンコク ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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