『フリアとシナリオライター』 梅風呂

2006年01月09日

『フリアとシナリオライター』

フリアとシナリオライター』文学の冒険シリーズ マリオ バルガス=リョサ著 野谷文昭訳 読了。

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初のバルガス=リョサ作品だ。リョサは1936年生まれのペルー人作家。有名な作品は『緑の家』や『密林の語り部』、『世界終末戦争』、『都会と犬ども』など。現代ラテンアメリカを代表する作家の一人である。国際ペンクラブ会長を務めたり、ペルーの大統領選挙に出馬した経歴からして、政治力のある人物でもある。


『フリアとシナリオライター』は、ペルーでは1977年に出版されたのだが、今回ようやく日本語に翻訳された。粗筋は以下の通り。


主人公マリオは18歳で、大学に籍を置きながらラジオ局で働いている。両親はアメリカに住み、祖父母の家に下宿している。親戚の家のうちのひとつ、ルーチョ叔父さんの家に、ルーチョ叔父さんの奥さんの妹であるフリアが滞在することになった。フリアは32才、離婚をして、再婚相手を探している最中だ。フリアとマリオは親戚どうしとして、気楽に映画を見に行くようになったが、いつしかマリオは自分がフリアを愛していることに気づいた。
一方、マリオの勤めるラジオ局に、ラジオドラマの天才的なシナリオライター、ペドロ・カマーチョがやってきた。



主人公マリオの日常(フリアとの恋愛)を主軸としながらも、ペドロ・カマーチョの書いたシナリオが作中作として交互に挿入されている。そのペドロ・カマーチョの書いた(という設定の)作品が面白い! どの作中作品も、ラジオドラマっぽく「はたしてこの事件の行方はどうなるのだろうか」という未完の形をとっているので、想像力をかきたてることこの上なし。ペドロ・カマーチョの人物像はというと、奇妙奇天烈だがどこか哀愁を感じさせる。主人公マリオとフリアの恋愛の方も、血は繋がってはいないが甥と叔母という関係であるため、さまざまな障害が待ち受けている。それを乗り越えようとするドタバタがまた面白い。
そしてなんといってもこの作品の醍醐味は、ペドロ・カマーチョの作品が

っとあまり書きすぎるとネタバレになるので、これ以上は秘密。面白いだけの小説ではなく、物語の技法的にも見事だし、適度に考えさせられる内容を含んでいる。同じラテンアメリカ作家であるイサベル・アジェンデの作品は、ラストに向かって物凄い勢いでページをめくりたくなるが、バルガス=リョサの作品はずっとページをめくり続けていたい感じ。
2006年しょっぱなから素晴らしい作品を読みました。
posted by うめ at 01:52| バンコク ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 南米の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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